発達障害の可能性のある児童生徒等に対する
教科指導法研究事業

①国語における「志導」に関する教授法(4)

★ 対象とした学習上のつまずくポイント:

聞く話す機能は実年齢相当であるが、文字の読み書きに困難がある。具体的には、教科書や副読本、ワークシート等の読み書きができない、もしくは読み書きに同学年の児童生徒に比し2〜3倍程度の時間を要する。

★ 上記に対する取組内容:

上項★3の症状を呈する障害としては「発達性ディスレクシア、特異的読字障害」等が考えられる。教育現場においては医学的診断や教育的判断が出ていない児童生徒も多く、また教職員・保護者も「読み書きは遅いが障害とはいえない」と捉えている事例も多い。したがって、教職員・保護者からは「本人のやる気がないからやらないだけ」「繰り返し学習・練習すれば覚えられる」と誤解され、学習性無気力等の二次障害に発展する場合も少なくない。このような「読み書き困難」というつまずきに関して、教員養成課程等における学部生・大学院生への教授法については後述する。本項では、上記のつまずきがある児童生徒への「志導」の方法について開発・考案した内容を示す。

D) 児童生徒が書きやすい・学びやすいと実感できる教材の利用:

児童生徒によって、書きやすい・学びやすいと実感できる教材が異なる。

  • (ア) 書きにつまずきがある児童生徒が、授業中、黒板に記載された内容を全てノートに書き写すことは難しい場合が多い。仮に、書き写すことができたとしても、形式的に模写しているだけであり、学習記録や復習用の情報として機能しない。そこで、書き写す文字を少なくし、本人が学習内容を意識しながら書き写すことができるように、穴あきワークシートを用意した。また、必要に応じて、学習支援者(学部生、大学院生、ボランティア等)と一緒に、休憩時間等に不足部分を補ったり、書き間違えを修正したりすることで、学習内容が定着しやすくなる事例があった。
  • (イ) 太軸の鉛筆やシャープペンシル(おけいこえんぴつ、Dr.グリップ等)や濃い芯の鉛筆(4B〜10B)、鉛筆用グリップを用いることで、書きやすいと実感できる児童生徒も多く、自ら書きやすい文房具を探求・選定するよう推奨する。
  • (ウ) ドリルやテストの解答欄の枠を太くする、解答欄を1.2〜1.4倍程度に拡大する、原稿用紙のようにマス目を設けることで「書きやすくなった」と自己評価する児童生徒もいた。