発達障害の可能性のある児童生徒等に対する
教科指導法研究事業

①国語における「志導」に関する教授法(3)

★ 対象とした学習上のつまずくポイント:

聞く話す機能は実年齢相当であるが、文字の読み書きに困難がある。具体的には、教科書や副読本、ワークシート等の読み書きができない、もしくは読み書きに同学年の児童生徒に比し2〜3倍程度の時間を要する。

★ 上記に対する取組内容:

上項★3の症状を呈する障害としては「発達性ディスレクシア、特異的読字障害」等が考えられる。教育現場においては医学的診断や教育的判断が出ていない児童生徒も多く、また教職員・保護者も「読み書きは遅いが障害とはいえない」と捉えている事例も多い。したがって、教職員・保護者からは「本人のやる気がないからやらないだけ」「繰り返し学習・練習すれば覚えられる」と誤解され、学習性無気力等の二次障害に発展する場合も少なくない。このような「読み書き困難」というつまずきに関して、教員養成課程等における学部生・大学院生への教授法については後述する。本項では、上記のつまずきがある児童生徒への「志導」の方法について開発・考案した内容を示す。

C) 児童生徒が書いた文字への対応:

教育現場においては、「とめるべきところをはねているから、誤答(バツ)にしました」等のように、児童生徒が書いた文字の細部についても教員が「正誤」として判断することが多い。この判断によって、書きにつまずきがある児童生徒が何度も書き直しを求められ、学習性無気力に陥る事例が少なくない。一方、「常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)」に、「常用漢字表では,個々の漢字の字体(文字の骨組み)を,明朝体活字のうちの一種を例に用いて示した。このことは,これによって筆写の楷書における書き方の習慣を改めようとするものではない。字体としては同じであっても,明朝体活字(写真植字を含む。)の形と筆写の楷書の形との間には,いろいろな点で違いがある。それらは,印刷上と手書き上のそれぞれの習慣の相違に基づく表現の差と見るべきものである」と示されている通り、明朝体にしろ、筆書の楷書にしろ、いわゆる「とめ」「はね」「はらい」等は様々な表現・書き方がある。そのため、標準的な字形を伝達することは必要であるが、児童生徒が宿題やテスト等で解答した文字について、「表現」と捉えるべき部分を、厳密に「正誤」として判断するべきではない。
このことを踏まえ、書きのつまずきがある児童生徒の担任や教科担当教員に、過度の「正誤」判断をしないよう教授した。誤答と判断される文字、修正を求められる頻度が減ったことから、児童生徒の精神的負荷が軽減された。