事業概要
本事業の背景
幼児教育・保育現場において特別な配慮を必要とする幼児への指導を充実させるためには、教職員が知識・技能を有することが重要です。
教職員が特別な配慮を必要とする幼児に教育を実施する際には、障害がある幼児児童生徒が抱える生活・学習上の困難を共感的に理解することが重要です。
申請者らのこれまでの発達相談、及び教職員研修に携わった経験から、教職員が、障害がある幼児児童生徒の困難を共感的に理解するためには、以下の事項が必要であることがわかっています。
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(a)障害当事者の話(体験談)を聞くこと
一人称の話を聞くことは「あなた」を知る第一歩となります。しかし、他者にわかるように話すことができる当事者、他の障害特性も代弁できる当事者(「支援する力」がある人)は多くありません。
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(b)疑似体験+支援者の話を聞くこと
疑似体験により、障害のある子ども(「あなた」)からみた世界に近づくことができますが、本人は意識していない「盲点」も存在します。そこで、多様な当事者の困難とその支援をよく知る支援者に話を聞き、多様な障害特性とその困難を俯瞰し、当事者の「盲点」も含めて、体系的に理解することが重要です。しかし、三人称の話が多くなるとリアリティが不足したり、指導者的な観点が多くなったりする可能性も高いです。
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(c)教育実践の省察
(a)(b)による講話・演習だけではなく、学んだことを自らの教育実践に活用することが重要です。そのためには、理論と実践を往還する研修プログラムが必要となります。
以上のことから、講義形式だけの研修ではなく、演習(疑似体験)や教育実践の省察を含めた「理論と実践を往還する研修プログラム」を開発するが必要であると考えるに至りました。
本事業の目的
教育・保育現場の教職員を対象とした、障害のある幼児に関わる「理論と実践を往還する研修プログラム」を開発し、その動画コンテンツを作成します。
取組内容
本研究は3か年で実施します。
- ①本学教育学部附属幼稚園(幼少連携の観点から附属小学校の教職員も含む)を主たる対象として研修プログラム(当事者の体験談・疑似体験・支援者の講話・教育実践の省察)と教材の開発を行い、その教育効果を検証します。
- ②対象を本学教育学部附属幼稚園近隣の幼稚園・認定子ども園等の教職員や公立小学校等の教職員を対象に広げ、開発した研修プログラムと教材の妥当性・汎化可能性に検討を加えます。
- ③3年間の事業が終了する時点では、愛媛県だけではなく、全国の幼稚園・認定子ども園等の教職員や、幼少連携を図る小学校教職員にとって、小愛のある幼児児童を適切に支援・指導するための知識・技能を高める研修プログラムと教材として確立を目指します。
研修プログラムの開発について
また、研修プログラムを開発するため、愛媛大学教育学部が運営している相談ブース「こもれび」にて、困難さのある幼児の個別相談の実施や教育実践における個別助言・各事例のカンファレンスなどのチュータリングコーチとしての業務を行っています。
相談ブースこもれびとは?
愛媛大学教育学部が実施主体となり、困り感を抱える幼児を対象とした相談ブース「こもれび」を運営しました。相談ブース「こもれび」には、相談員として言語聴覚士や特別支援教育士、教育学部研究員などが在籍し、個別相談の実施や教育実践における個別助言・各事例のカンファレンス等を行いました。