学習上の支援機器等活用評価研究事業

1.事業の概要

1.1 背景・目的

インクルーシブ教育システムの構築に向け,障害のある児童生徒の学びの充実を図るために,児童生徒の障害の状態や特性等を踏まえて,支援機器(ICT機器を含む、以下同様)を学習教材として効果的に活用しつつ適切に指導することが,合理的配慮提供の観点から求められています。
一方で,教育現場では,支援機器を活用した指導が,合理的配慮であるということが十分に理解されているとは言い難い状況にあります。この原因としては,下記の状況が考えられます。

    1. 教職員が,支援機器によって障害による困難が軽減されることについての知識や情報を持っていない
    2. 障害のある幼児児童生徒が,支援機器を利用することによる学習効果が明確に示されていない
    3. 適切な支援機器の選定や適用(フィッティング),活用の方法等が個人によって異なるため,他の事例・取組に援用しづらい等

 そこで,愛媛大学では,ICTを含む支援機器等教材の選定・適用時に必要な評価指標,学習効果を客観的に示す学習評価方法を開発し,教育現場の教職員が円滑に活用できるようにすることを目指しました。その際,以下の4つの検討事項について,本学での研究事業,及び指定校での教育実践研究を取り組みました。

1.2 4つの検討事項及び取組概要

【検討項目1】

障害のある幼児児童生徒が学習活動を行う場合に生じる困難さを把握し,適切な指導方法の工夫として教材を選定・活用するために必要な指標の研究

取組概要(▶︎「FIAT-LDとは」)

愛媛大学版「読み書き困難のある児童生徒への教材選定・適用時に必要な評価指標 Fitting Index of Assistive Technologies for children with LD第1版(以下,FIAT-LD Trial1)」を改良して,FIAT-LD第2版(FIAT-LD Trial2)を開発しました。


【検討項目2】

支援機器等教材の活用に伴う学習評価方法の研究

取組概要(▶︎「取組成果」)

 2018年度は指定校3校(公立A小学校・私立B中学校・私立C高等学校)の対象児童生徒に対して,FIAT-LDの一対比較指標を使って読み書き能力の状況を把握し,支援機器等教材の選定・適用を行いました。使用する教材が確定した後,対象児童生徒に対して,支援機器等教材の活用による学習効果の分析・評価を行いました。


【検討項目3】

障害のない幼児児童生徒や保護者に対し,支援機器等教材の活用が障害のある幼児児童生徒の合理的配慮及び指導上必要であることを理解してもらう研究

取組概要(▶︎「取組成果」)

・(公立A小学校)2018年度〜
 読み書き困難のある児童が在籍する学級のクラスメイト,及び教職員等に向けて,体験型授業を通した実践研究を行いました。また、読み書き困難のある児童の在籍学級児童全員に向けて、対象児童自身が合理的配慮を説明することで生じる影響等を踏まえた実践研究を行いました。
・(私立B中学校)2018年度〜
 読み書き困難のある生徒の該当学年の生徒全員に向けて,対象生徒自身が合理的配慮を説明することで生じる影響等を踏まえた実践研究を行いました。
・(私立C高等学校)2018年度〜
 読み書き困難のある生徒自身が受け入れることができることを目的とした実践研究を行いました。
・(公立D小学校)2019年度〜
読み書き困難のある児童が在籍する学級のクラスメイト及び教職員等に向けて,体験型授業を通した実践研究を行いました。

【検討項目4】

通常の学級や特別支援学級の幼児児童生徒が特別支援学校で活用した支援機器等教材を活用する際の留意点(評価指標・選定検討・実践・学習評価)

取組概要(▶︎「取組成果」)

 通常の学級や特別支援学級において支援機器等教材の活用を促すには,対象児童生徒と周囲の人びとの双方への介入が重要であることが,指定校での実践研究を通して得られた。

1.3 成果報告リーフレットの作成

 読み書き困難に関する成果報告リーフレットを作成しました。 ▶︎「成果報告リーフレット」

 
 
 

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愛媛大学教育学部 苅田知則研究室

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