発達障害の可能性のある児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮研究事業

事業の概要

 

1.1 背景・問題意識

 

 教育現場では,障害のある幼児児童生徒が将来の自立と社会参加に向けた学びの充実を図るための合理的配慮を,円滑に提供することが求められています。一方で,公立・私立小中学校の通常の学級,及び公立・私立高等学校の普通科等において,合理的配慮を求める児童生徒が在籍していたとしても,十分に必要な合理的配慮が提供されていないと言えます。その問題背景から,4つの課題が挙げられます。

    1. 一部の教科の成績評価(5段階)において1〜2がつく児童生徒は,知的・認知的遅滞はないものの,認知処理・障害の特性によって,習熟度に偏りが出現している可能性がある。しかし,特別支援教育担当者以外には,その偏りが児童生徒個人の問題として認識され,個別の指導計画・教育支援計画は作成されず,教育的配慮・工夫,合理的配慮等が提供されない事例が多い。
    2. 感覚面の過敏性がある児童生徒には,物理的刺激量を制御する設備や道具を用いると有用であることが知られている。しかし,児童生徒本人がその有用性を十分理解していない,利用についての動機付けが高まっていない等により,教育現場での活用が進んでいない事例もある。
    3. 通常の学級に在籍しているが,障害・特性に応じた特別の指導が必要な場合に,本学附属校園では,公立校の「通級による指導」のような制度がなく,児童生徒が求める合理的配慮を十全に提供できていない。
    4. 愛媛大学では,教育学部と附属校園が協働し,附属特別支援学校を中核とした特別支援教育コーディネーター会議,及び「学びのダイバーシティーサポートチーム」を組織しており,通常の学級における基礎的環境の整備,及び合理的配慮の提供,個別の指導計画・教育支援計画の策定等について全学部的取組を行なっているが,これらのメンバーの中に保健医療福祉領域を専門とする人材がいない。
1.2  1年目(2018年度)事業の概要

 

 愛媛大学では,上述した課題を解決するために,教育学部と附属校園が協働し,多様な視点から合理的配慮の提供について協議する体制を整え,「学びのダイバーシティーサポートチーム」に保健医療福祉領域の専門性を導入することにより,各専門性を活かした助力を依頼するシステムの構築を図りました。また,合理的配慮として個別の指導が必要な児童生徒については,相談ブース「こもれび」を開設し,個別指導を提供するとともに,幼児児童生徒が在籍する学級において合理的配慮の提供の支援を行いました。(▶︎「取組内容」

 そこで,本学附属校園においては,「発達障害の可能性のある児童生徒のつまずきや困難な状況を教員が気づくための理解啓発とその合理的配慮に関する研究」のうち,下記の2つの研究を実施することを目標とし,2018年度の事業を立案・実施しました。

    1. 感覚面(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚等)において過敏性や鈍感性がみられる児童生徒に対する合理的配慮に関する研究
    2. 通常の学級担当教員が児童生徒の実態把握に基づき、個別の指導計画及び個別の教育支援計画を効果的に活用し、合理的配慮の実践を行う研究
1.3  2年目(2019年度)事業の概要

 

2018年度の事業によって,附属校園内において,①個別指導を含めた合理的配慮を円滑に提供すること,②環境への過敏性のある幼児児童生徒(広義には吃音も含む)が在籍する学級の環境調整等に取り組む基盤が整ったこと,③附属校園コーディネーター会議と「学びのダイバーシティーサポートチーム」の協働により,個別の指導計画に基づいて通常の学級での合理的配慮の実践が可能になったこと等,大きな成果が得られました。そこで,2019年度は,2018年度の取組みを継続・発展させ,下記の2つの研究も実施することを目標とします。

    1. 発達障害の可能性のある児童生徒本人や保護者からの合理的配慮の意思の表明に対する学校の教職員の合理的配慮の提供に関する研究
    2. 発達障害の可能性のある外国人の児童生徒や十分な支援が受けられず不登校により学校生活に支障をきたしている発達障害の可能性のある児童生徒に対する合理的配慮に関する研究
また,本学附属校園における合理的配慮の提供体制を充実・拡充し,近隣の公立・私立小中学校の通常の学級,及び公立・私立高等学校の普通科等に在籍する児童生徒も,本事業で開設した相談ブース「こもれび」や「学びのダイバーシティーサポートチーム」等を利用できるようにします。

 

1.4  3年目(2020年度)事業の概要

 

これまでの事業によって,附属校園内において,①個別指導を含めた合理的配慮を円滑に提供すること,②環境への過敏性のある幼児児童生徒(広義には吃音も含む)が在籍する学級の環境調整等に取り組む基盤が整ったこと,③附属校園コーディネーター会議と「学びのダイバーシティーサポートチーム」の協働により,個別の指導計画に基づいて通常の学級での合理的配慮の実践が可能になったこと等,大きな成果が得られました。そこで,2020年度は,今までの取組みを継続・発展させ,下記の4つの研究を実施することを目標とします。
 

    1. 感覚面において過敏性や鈍感性がみられる児童生徒に対する合理的配慮に関する研修
    2. 通常の学級担当教員が児童生徒の実態把握に基づき,個別の指導計画及び個別の教育支援計画を効果的に活用し,合理的配慮の実践を行う研究
    3. 高等学校の入学選抜において,本人・保護者の希望,障害の状態を踏まえた合理的配慮の研究
    4. 高等学校の入学試験を前提に実践した合理的配慮の学習評価の在り方の研究

 

 また,本学附属校園における合理的配慮の提供体制を充実・拡充し,近隣の公立・私立小中学校の通常の学級,及び公立・私立高等学校の普通科等に在籍する児童生徒も,本事業で開設した相談ブース「こもれび」や「学びのダイバーシティーサポートチーム」等を利用できるようにします。

 

事務局お問い合わせ
愛媛大学教育学部 苅田知則研究室

〒790-0855 愛媛県松山市持田町1丁目5番22号
TEL:089-913-7863(平日10:00~17:00)
Mail:karilab@me.com